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省エネコラム

グリーンビルディングという世界共通語
~性能を競う時代から、自然と調和する時代へ~

省エネや環境配慮は、もはや一部の先進的な建築の話ではなく、世界の建築に共通する前提条件になりつつあります。

本コラム「エコテラス」ではこれまで、ドイツ、フランス、スウェーデン、韓国、中国、カリフォルニア、オーストラリアと、地域も社会背景も異なる国々の省エネ・環境建築の取り組みを見てきました。

制度や数値はさまざまでも、根底で共通しているのは「建築が社会とどう向き合うか」という問いです。

今回は、それらを踏まえながら、グリーンビルディングの世界的な定義と向かう方向、日本がこれから目指すべき道を整理してみたいと思います。

●世界が共有するグリーンビルディングの定義●

世界的に見たとき、グリーンビルディングは単なる省エネルギー建築を意味しません。
WorldGBC(World Green Building Council:世界グリーンビルディング協議会)は、ネットワークとして取り組む主要なインパクト領域として、以下の4項目を示しています。

1: Climate action(気候変動対策)
2: Resources and circularity(資源と循環性)
3: Health, equity and resilience(健康・公平性・レジリエンス)
4: Sustainable finance and ESG(持続可能な金融とESG)

これらを統合すると、

『建物のライフサイクル全体を通じて、環境負荷を低減し、人の健康や快適性を高め、経済的・社会的価値を持続的に生み出す建築』

これが国際的に共有されているグリーンビルディングの定義と言えるでしょう。

これまで見てきたどの国でも、省エネは「目的」ではなく、「社会を支える手段」として位置づけられています。

つまり、グリーンビルディングの概念は、環境性能だけでなく、人・社会・未来まで含めて「持続可能性をデザインした建築」であることが前提となっています。

そして重要なのは、評価基準の数値を競うための建築ではなく、建物と人、さらには植物を含めた自然と調和するための建築という考え方です。

●世界が向かう方向と、日本とのずれ●

世界の流れを俯瞰すると、グリーンビルディングは「性能を満たす建築」から「価値を生み続ける建築」へと軸足を移しています。
エネルギー削減に加え、健康、快適性、レジリエンス、地域との関係性まで含めて評価する方向です。

一方、日本では依然として「基準を守ること」が中心に置かれがちです。
省エネ基準は最低限の安全ラインとして重要ですが、それだけでは建築の可能性を広げることはできません。

世界が「どんな暮らしを実現する建築か」を問うのに対し、日本は「違反しないかどうか」に意識が向きやすい。この視点の違いが、グリーンビルディングへの距離感を生んでいます。

●国ごとに基準が違う理由●

国によって省エネ・環境建築の基準が異なるのは、決して足並みが揃っていないからではありません。
気候条件、エネルギー事情、住宅ストック、社会制度、そして建築に求められる役割が違うからです。

寒冷地のスウェーデンと温暖なオーストラリアが同じ数値基準になることはあり得ませんし、再生可能エネルギー比率の高い国と化石燃料依存の国では、評価の重点も変わります。

重要なのは「どの基準が正しいか」ではなく、「その国の社会課題にどう応えているか」ではないでしょうか。

グリーンビルディングは、世界共通の思想を持ちつつも、地域ごとに柔軟な対策を講じながら実行可能な概念なのです。

●日本がこれから向かうべき方向●

それでは、私たちの暮らす日本では、「日本の地域特性に適応したグリーンビルディング」をどのように作り上げていけばいいのでしょうか?

日本がこれから目指すグリーンビルディングは、海外基準をそのまま輸入することではありません。
日本の気候、木造建築文化、都市構造、暮らし方を踏まえた上で、世界基準に呼応できる独自の思想をつくることです。

それには、省エネを「義務」ではなく「建築の価値」に変えること。
数値を守る建築から、未来を見据え、人と自然が調和する建築へと視点を広げること。
その先に、日本ならではのグリーンビルディングの姿が見えてくるはずです。

エコテラスが見てきた世界の事例は、日本の建築がこれから進むためのヒントをすでに示しています。
日本がもともと持っている木造建築や歴史的建築の良さを理解したうえで、建築を通して、どんな社会や暮らしを描いていくのか。
その「描いた未来」につなげる意思を、まず持つことが重要なのではないでしょうか。

そして、グリーンビルディングという世界共通語を、日本語としてどう語るのか。
いま、その姿勢そのものが問われているのです。

次回は、熱帯気候という厳しい条件下で成果を出しているシンガポールの取り組みを掘り下げてみたいと思います。

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<参考資料>
1 WorldGBC Mission & Impact Areas(公式)
https://worldgbc.org/about-us/our-mission/

2 Green Building Japan
https://www.gbj.or.jp/whats-green-building/

3 spaceshipearth
https://spaceshipearth.jp/greenbuilding/

著者プロフィール
田中知代(たなか・ともよ)
株式会社空間メソッド企画 代表取締役
千葉市在住
建築設計事務所、建築物の遵法性調査、指定確認検査機関での勤務を経て起業。建築関係法規のコンサルティング、建築に係る教育、セミナーなどの業務を行う。千葉県建築士会主催の公開勉強会、法規セミナー、その他学校教育機関の講師経験など多数。実務に直結する法規教育を提供。
メルマガ配信やLINEオープンチャット「建築法規を好きになろう」の『つぶやき』で、建築法規をわかりやすく解説。千葉県建築士会会報誌「建築士CHIBA」で建築法規を楽しく学べる「基準法であそぼ」連載中。
一級建築士/建築基準適合判定資格者/宅地建物取引士/インテリアコーディネーター資格保有

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